プロダクションノート 2
謎の弁当屋

　むろん、われわれとて会議のたびに街のレストランを食べ歩いていたわけではなく、深夜まで会議室での相談や討論、テストプレイが続けられることも多かった。
　そのような場合、夕食は宅配弁当を頼み、皆で会議室で食べることになる。

　ところが、このころ頼んでいた弁当業者の中に、不思議なシステムになっているところがあった。
　出前メニューを見ると、各料理の価格が「1000〜」「1200〜」というふうに、固定ではなく「〜」つきで表示されているのだ。
　これはどういう意味なのか問い合わせてみたところ、
「お値段はご予算に応じて100円刻みで指定でき、高い値段にすればそれ相応に同じ料理でも豪華になります」
　という。
　なんと、我々がまさに作ろうとしているゲームのコンセプトに非常に近いシステムが、この店ではとられていたのだ。
　当然これはスタッフの好奇心をいたく刺激することとなり、以後数週間、毎度の夕食はこの業者から頼むようになった。むろん、
「1000円から1600円まで、100円きざみで中華弁当１つずつお願いします」
　といった具合に注文するのだ。で、配達されるとアミダやジャンケンで誰がどれをもらうかが決まる。
　そして銘々の弁当を１つずつ広げては、
「おお！　1000円の弁当ではキャベツしか入ってないところに肉団子が加わっている！」
「すげえ！　こっちでは肉団子がカニ爪フライに変わってるぜ！」
　……と、値段の違いがどこに現れているのか確認しては喜んでいたのであった。

　しかし、当の弁当屋から「そういう注文はお断り」と宣言されるまでに、あまり時間はかからなかった。

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