1024×768ドットTFT、RGB入力端子つきで20〜30万円台、CRTなら14〜16インチに相当する外付け型液晶ディスプレイがようやく本格的に出回るようになってきた。
　まだ高いといえば高いが、「今度PCのディスプレイを買うときは絶対液晶!」と前から心に決めていたぼくの場合、積年の夢の実現価格と考えれば充分リーズナブルに感じられるレベルではある。
　……というわけで、要するにぼくはTFT液晶ディスプレイを買ってしまったわけなのだが、残念ながらまだ手放しで「快適そのもの!」とまではいえない状況にあったりする。どういうことかというと……。

●話せば長いことながら……

　特定の販売店やメーカーに対する苦言が目的じゃないので固有名詞は伏せるが、今回買った液晶ディスプレイ、じつは「大はずれ品」に当ってしまったようで、買ってから実際に使えるようになるまで1週間近くを要し、いまも「手を焼きながらだましだまし使っている」状況だったりする。以下順を追って経過を説明しておこう。

●1日目(金曜日)

　秋葉原で買って帰って(重さ4kg程度なので充分手で運べる)、さっそくメインPCに接続、Windows95を起動したのだが、ねじくれた縞模様状の表示ばかりで、ぜんぜんまともな画面にならない。
　どこか設定が悪いのだろうと、Windows95の「画面のプロパティ」、BIOS設定、ディスプレイ側の周波数調整メニュー等、いろいろいじってみたが改善しない。
　他のPC……デスクトップ1台、携帯型PC3台のRGB端子にもつないでみたが、状況は変わらない。IBM PalmTop PC110やLibretto50のVGA画面すら映らない。うーむ……。

●2日目(土曜日)

　どう考えてもヘンなので販売店に電話、「初期不良らしいが交換可能か」と聞くと、「初期不良品交換は、メーカーの担当者が『確かに初期不良です』と認定した場合に限ります」との答え。なるほど。
　さっそくメーカーの相談窓口に電話。が、「土曜なのでわかる者が出勤してません」との答え。状況を伝言し、あらためて先方から週明けに電話をもらうことにする。

●4日目(月曜日)

　午後3時過ぎまで自宅にいたが連絡がこない。時間ぎれで会議出席のため外出、その夜は都内の仕事場に宿泊。
　のちほど家族から、「夕方にメーカーから電話があった」という伝言があった。

●5日目(火曜日)

　午前中に帰宅。前日にメーカーの担当の人からもらった伝言通りに操作(付属マニュアルには書かれていない特殊操作)してみる……が、直るどころか、画面が凍り付いたようになってしまい、前より状況が悪化。
　しかたなく、またメーカーに電話したが、昨日電話をくれた担当者は不在らしく、他の係員に再び詳しく説明。が、結局、
「電話では状況を把握しきれないので、近くの修理窓口に持ち込んでみてほしい」
　との答え。

●6日目(水曜日)

　郊外(電車+徒歩で40分ぐらいのところ)の修理窓口に電話で営業時間と所在地を確認の上、地図を片手に液晶ディスプレイを箱ごとえっちらおっちら持って出かける。
　窓口で梱包を広げ、持参したIBM PalmTop PC110のポートリプリケータのRGB端子に接続し、状況を見てもらおうと……したところが。

　うっそぉぉぉお！

　なんとそこにはPC110の「Personaware」のメニュー画面が、なにくわぬ顔できちんと映っていたのである。購入後6日目にして初めて拝んだ「まともな表示」であった。
　となると考えられる原因は、

• 自宅からここへ持ってくるまでの震動で不具合が直った可能性。
• 自宅の電源電圧まわりに起因する問題の可能性。

　……の2つのうちどちらかに絞られる。
　絞り込めたのはよいけれど、まともに映っているものを修理に出しても「異常なし」で返ってくる可能性が高いわけで、結局そのまますごすご持ち帰ることにした。

●その夜

　帰宅後、またセットアップをやり直してみる……が、

• 自室のコンセントに接続……またしても映らない。
• 家族の寝室のコンセントを借りて接続……それでも映らない。

　家じゅうどこのコンセントにつないでも、相変わらずねじくれた画像しか映らない。どうも電圧とかのせいではなさそうだが……ええい、なんか腹たってきたぞ。20何万円も払って、なんでこんな苦労しなくちゃいけないのだっ。
　自他ともに認める温厚な人格者(ほんとか？)YanaKenとはいえ、ここに至ってはキレざるを得ない。
「おぬし機械のくせしてどこまで人を愚弄するか！　こうしてくれるワ！」
　とばかり、思わず液晶ディスプレイに往復びんたを食らわせてしまった…………のだが、なんとその瞬間、ウソのようにすっきり、液晶ディスプレイはマトモな映像を映すようになった。すなわち、
「どこか最初から接触が悪いらしく、叩けば直る」
　というえらく原始的な結論に行き着いてしまったのだった。うーむ。頭痛い。

●映ってしまえばとても快適

　で、結局ぼくはこの液晶ディスプレイをそのまま、修理にも交換にも出さず使っている今日このごろなのだ。以後も同様に画面が乱れたり凍りつくトラブルを2度ほど経験したが、そのつど「往復ビンタ」で切り抜けている。
　症状がここまで判明した以上は窓口でも説明がしやすいため、保証がきく1年以内には必ず修理に出すつもりだが、今しばらくこのまま使うつもりでいる。とりあえず実際使えているわけだし、

• ゆがみがまったくない平面スクリーン。文字表示はあくまでもシャープ。発色もかなり明るい。
• CRTよりはるかに省スペース。
• ノートブックPCより自由な姿勢で使える。
• RGB端子接続のため汎用性が高く、OSを問わない。(専用インターフェースカードを要するタイプの液晶ディスプレイだと、OS/2 Warpのドライバが用意されていなかったりするし、複数のPCにとっかえひっかえつないで使うことも不可能なため魅力薄)
• VGA解像度の画面を1024×768ドットいっぱいに拡大表示するモードを備えており、アップスキャンコンバータを介してテレビ番組やビデオソフトを視聴するのにも適している。(14インチ級の「液晶TV」って、実際体験してみるとホントにキレイ)

　……など、ちゃんと動いている限りはいいことずくめで、もはや1日たりと手放せない気持ちになってしまったからだ。ただしさっき書いた初期故障以外にも、いまいち華奢な側面がいくつか目につく。

• つなぐPCによっては、モアレやチラつきやズレのないよう設定するのにけっこう手間がかかる。
• 本体を動かすと(電流が不安定になって安全機構が働くため？)電源が切れてしまう場合がある。

　シャープの液晶テレビ「ウィンドウ」のように、「ディスプレイを横だおしにして寝っころがって使う」みたいなラフな使い方が気楽にできるようになればよいのだが。ともあれ、こういった繊細すぎる面とか不安定な面がもう少し改善された液晶ディスプレイが安価に出てくるようになったらすかさず2台めを買って、今使っている方を安心して修理に出すつもりのYanaKenなのであった。